頬の下垂、口元のもたつき、マリオネットライン、ぼやけたフェイスラインなど、加齢とともに下方向へ移動した組織を、顔立ちに合った方向へ移動させます。
糸リフトの仕上がりは、糸の素材だけで決まるものではありません。
コグの形状、糸の長さや太さ、挿入する層、糸を通す方向、使用する本数、脂肪の重さ、皮膚の厚みなどによって、組織を支える力や仕上がりは異なります。
当院では、一律に同じ糸を使用するのではなく、たるみの位置や程度に合わせて、以下の3種類の糸を使い分けます。
吸収糸の周囲では、糸の挿入に伴う創傷治癒反応や、糸の素材に対する組織反応によって、コラーゲン形成がみられます。
ただし、施術直後に現れる主な変化は、コラーゲンによるものではありません。糸に付いたコグが皮下組織を保持し、下がった組織の位置を移動させる物理的な作用によるものです。
加齢に伴う顔のたるみは、皮膚だけが伸びることで生じるものではありません。
皮膚の弾力低下、浅層脂肪の下垂や偏り、支持組織の変化、骨格や深部脂肪のボリューム減少などが重なることで、頬や口元、フェイスラインの形が変化します。
糸リフトでは、主に皮下組織へ糸を挿入し、糸に付いたコグを脂肪や線維性組織へかけます。
コグが組織を保持した状態で、下がった組織を上方または外側へ移動させることで、頬や口元のもたつき、フェイスラインの乱れを整えます。
皮膚表面だけを強く引っ張るのではなく、たるみの原因となっている脂肪や皮下組織を、適切な方向へ移動させることが重要です。
そのため当院では、強く引き上げることだけを目的とせず、以下の点を確認したうえで、糸の種類や本数、挿入方向を決定します。
PDOモールディングスレッドは、頬や口元、フェイスラインに生じた軽度から中等度のたるみに対して、幅広く使用する吸収糸です。
下がった組織を一部分だけ強く引っ張るのではなく、複数本の糸をたるみの方向に合わせて配置し、頬から下顔面にかけての輪郭を自然に整えます。
当院では、初めて糸リフトを受ける方や、過度に強い変化ではなく、顔立ちになじむ引き上げを希望される方に提案することが多い糸です。
糸の表面には、皮下組織を保持するためのコグと呼ばれる突起が付いています。
カッティング式の糸は、糸の表面へ切り込みを入れ、その一部を起こしてコグを形成します。
一方、モールディング式は、型を用いて糸本体とコグを一体として成形します。
糸の芯へ切り込みを入れてコグを作る構造ではないため、糸本体の太さを保ちながら、立体的なコグを配置できることが特徴です。
ただし、モールディング式であれば、一律に強く引き上がるというものではありません。
実際の保持力や仕上がりは、糸の太さ、コグの形状、挿入する層、本数、挿入方向などによって変わります。
PDOモールディングスレッドには、同じ形状のコグが、糸の途中を境に互いに反対方向を向くように配置されています。
前後それぞれのコグが皮下組織を保持することで、移動させた脂肪や皮下組織を糸の両側から支え、頬やフェイスラインを整えます。
重要なのは、糸を強く引くことではなく、下垂した組織の位置や移動させたい方向に合わせて、糸を適切な層へ配置することです。
糸の構造が同じでも、挿入する層や方向がたるみの状態に合っていなければ、十分な変化が得られないことがあります。また、過度に引き上げると、頬が平坦に見える、顔の横幅が不自然に広がるなどの仕上がりにつながる可能性があります。
たるみの位置と一致しない方向へ糸を挿入すると、十分な変化が得られないだけでなく、頬が平坦に見える、顔の横幅が不自然に広がるなどの仕上がりにつながることがあります。
PDOは、ポリジオキサノンと呼ばれる吸収性の医療用素材です。吸収性縫合糸などにも用いられ、体内では加水分解によって徐々に吸収されます。
比較的しなやかで表情の動きになじみやすいため、日常的に動きのある頬や口元にも使用しやすい素材です。
吸収の過程では糸の周囲に創傷治癒反応が起こり、コラーゲン形成がみられますが、施術直後の主な引き上げは、コグが皮下組織を保持する物理的な作用によるものです。
PDOモールディングスレッドは、複数の方向へ糸を配置し、頬からフェイスライン全体のバランスを整える目的で使用します。
ANCHOR DX DOUBLEは、頬から口元、フェイスライン、あご下にかけて、広い範囲に下垂がみられる場合に使用する長い吸収糸です。
短い糸を局所へ配置する方法とは異なり、1本の長い糸を顔の輪郭に沿って通すことで、複数の部位を連続的に支えることができます。
単に引き上げる力が強い糸というよりも、下垂している範囲が広く、脂肪や皮下組織の重さを一部分だけでは支えにくい場合に適した糸です。
顔のたるみは、頬だけ、口元だけというように、完全に分かれて生じるものではありません。
頬の脂肪が下がることで、ほうれい線の上部が重くなり、その下方では口横やフェイスラインにも組織が集まります。
そのため、たるみの範囲が広い場合は、局所をそれぞれ別々に引き上げるよりも、顔の曲線に沿って一続きに支えた方が、自然に整えやすいことがあります。
アンカーDXダブルでは、約30cmの長い糸を利用し、たるみの位置に応じて、こめかみ側から頬、口元、フェイスライン、あご下などへ曲線的に配置します。
すべての方に同じルートで挿入するのではなく、脂肪の移動方向、皮膚の厚み、下顔面の形、左右差に合わせて、糸を通す位置と範囲を調整します。
糸の両端には針が付いており、それぞれの方向から糸を皮下へ通すことができます。
この構造を利用することで、長い糸を直線的に挿入するだけではなく、顔の輪郭に合わせて方向を変えながら配置できます。
糸に付いた多数のコグが広い範囲の組織へ接触するため、負荷を一か所へ集中させず、複数の部位へ分散させながら支える設計が可能です。
ただし、長い糸を使用すれば、必ず強く、長期間引き上がるわけではありません。
糸が組織を保持できる程度は、脂肪の重さ、組織の硬さ、挿入する層、糸の通し方によっても変化します。
ANCHOR DX DOUBLEには、PCL(ポリカプロラクトン)が使用されています。
PCLは一般に柔軟性があり、PDOと比較してゆっくり分解される吸収性素材です。
糸が長く、顔の曲線に沿わせる必要があるアンカーDXダブルでは、この柔軟性を生かして広範囲へ配置します。
アンカーDXダブルは、局所的な軽いたるみを細かく調整する糸ではありません。
頬から下顔面にかけて広く下垂している組織に対し、長い糸を利用して連続した支持をつくることを目的に使用します。
Extender Masterは、短いPDO製の吸収糸です。
頬全体やフェイスラインを大きく上方へ移動させる糸とは異なり、口角横やマリオネットライン周囲に残る、局所的なふくらみや段差を整える目的で使用します。
口元には、頬から下がってきた脂肪、皮膚の折れ込み、表情による動きなどが重なり、小さな隆起や境界が生じることがあります。
エクステンダーマスターは、そのような細かな輪郭の乱れに対して、必要な部分だけを調整する糸です。
エクステンダーマスターには、糸の両端から中央方向へ向かうコグが配置されています。
局所的なふくらみや段差をまたぐように糸を挿入すると、コグが両側の皮下組織を保持し、中央部分を支えます。
一方向へ強く引き上げるのではなく、ふくらみと周囲の境界をなだらかにつなげることで、口元の輪郭を自然に整えます。
そのため、通常の長い糸とは、糸を入れる範囲も、組織へ加える力の方向も異なります。
口角横のふくらみは、脂肪量だけで決まるものではありません。
頬から移動した組織が口元へ集まっている場合や、マリオネットライン周囲に境界ができている場合には、少量の脂肪でも目立って見えることがあります。
エクステンダーマスターは、脂肪細胞を減らしたり、脂肪を溶解したりする治療ではありません。
糸によって局所の組織を支え、周囲との段差をなだらかにすることで、ふくらみを目立ちにくくします。
脂肪量そのものが多い場合や、頬全体の下垂が強い場合は、この糸だけで十分に整えることは難しいため、長い糸によるリフトや脂肪に対する治療が必要になることがあります。
頬全体が下垂している場合は、まずPDOモールディングスレッドやANCHOR DX DOUBLEを使用し、下がった組織を適切な位置へ移動させます。
しかし、顔全体を引き上げた後も、口角横やマリオネットライン周囲には、小さなふくらみや境界が残ることがあります。
そのような場合にエクステンダーマスターを追加し、長い糸だけでは調整しにくい部分を局所的に整えます。
反対に、顔全体のたるみが軽く、口元の段差だけが目立つ方では、エクステンダーマスターを単独で使用することもあります。
エクステンダーマスターは、顔全体のたるみを引き上げる糸の代わりになるものではありません。
使用する目的を口元の局所的なふくらみや段差に絞り、長い糸では調整しにくい部分を整えるための糸として位置づけています。
当院では、引き上げる力の強さだけで糸を選択することはありません。
頬やフェイスラインに生じた軽度から中等度のたるみを、複数本の糸で自然に整える場合に使用します。
頬から口元、フェイスライン、あご下まで下垂が広がり、短い糸だけでは組織の重さを支えにくい場合に使用します。
口角横やマリオネットライン周囲に残る、局所的なふくらみや段差を細かく調整する場合に使用します。
顔全体の下垂と口元の段差が同時にみられる場合には、まず長い糸で組織全体の位置を整え、その後に短い糸で細かな輪郭を調整するなど、2種類以上の糸を組み合わせることがあります。
重要なのは、糸の本数を増やすことや、最も強い糸を使用することではありません。
たるみの位置、脂肪の重さ、皮膚の厚み、骨格、左右差、表情の動きを確認し、それぞれの糸が最も適した役割を果たすように使い分けます。
頬の脂肪が下方向へ移動すると、ほうれい線の上へ組織が乗り、口元が重く見えることがあります。
軽度から中等度の下垂にはPDOモールディングスレッド、頬全体へ広く下垂がみられる場合にはANCHOR DX DOUBLEを使用し、下がった組織を斜め上方へ移動させます。
ただし、頬のボリューム不足や骨格の変化が強い場合は、糸だけで引き上げると、かえってくぼみや平坦さが目立つことがあります。
そのような場合には、ヒアルロン酸注入などを組み合わせ、土台となるボリュームを補うことがあります。
口角横へ脂肪や皮下組織が集まり、マリオネットラインの上に段差ができている場合は、長い糸で頬から口元にかけての組織全体を移動させます。
そのうえで局所的な段差が残る場合には、エクステンダーマスターを使用し、口元の細かな輪郭を整えます。
マリオネットラインそのものが皮膚へ深く刻まれている場合は、糸で組織の位置を整えるだけでは十分に改善しないことがあります。
必要に応じて、CGスタイラーや通常のヒアルロン酸注入などを組み合わせます。
頬下部や口横の脂肪が下がると、輪郭がぼやけ、フェイスラインに凹凸が生じます。
たるみの範囲が軽度から中等度であればPDOモールディングスレッド、広い範囲に下垂がある場合にはANCHOR DX DOUBLEを選択します。
脂肪量が多い場合は、糸だけで無理に引き上げず、RF治療や脂肪に対する治療を組み合わせることがあります。
あご下のゆるみが、皮膚や浅層組織の下垂を中心としている場合には、長いANCHOR DX DOUBLEを用いて広く支えることがあります。
一方、脂肪量が多い場合や、広頚筋、骨格、皮膚の余りが主な原因である場合は、糸リフトだけでは十分に改善しないことがあります。
効果の現れ方には個人差があります。
糸リフトは、皮下組織の位置を移動させる治療であり、脂肪そのものをなくす治療ではありません。
また、余った皮膚を切除する治療ではないため、皮膚の余りが強い方や下垂が高度な方では、切開リフトほどの変化は得られません。
吸収性糸リフトは、適切な症例では比較的早期の変化が期待できますが、長期的な効果に関する研究は十分ではなく、変化の程度や持続期間には幅があります。
基本的には1回の施術を行い、腫れや引きつれが落ち着いた後に仕上がりを確認します。
必要な本数は、顔の大きさだけではなく、以下の要素によって異なります。
本数を増やせば、必ず自然に強く引き上がるわけではありません。
必要以上に糸を挿入すると、引きつれ、凹凸、違和感、組織の硬さなどが生じる可能性があります。
そのため当院では、本数を増やすことよりも、必要な位置へ必要な糸を配置することを重視します。
糸リフトは、下がった組織を物理的に移動させる治療です。
一方、Hydro Phaseは、RFによって皮膚や皮下組織を加温し、皮膚のハリや全体的な引き締まりを整える治療です。
糸で組織の位置を整え、RFで皮膚や皮下組織のゆるみへアプローチすることで、異なる原因を組み合わせて治療します。
施術の順序や間隔は、使用する糸、照射する深さ、施術部位に応じて調整します。
骨格や深部脂肪のボリューム減少によって、頬や口元を支える土台が弱くなっている場合は、糸だけで引き上げても十分に整わないことがあります。
通常のヒアルロン酸で深部の支持やボリュームを補い、糸で下がった組織を移動させることで、輪郭を整えます。
皮膚へ刻まれた細かな溝が残る場合は、CGスタイラーなどを使い分けます。
糸リフトは、皮膚そのものの乾燥、薄さ、小ジワ、肌質を直接治療するものではありません。
皮膚のハリ不足や小ジワが強い場合には、RedTouch PRO、肌育製剤などを組み合わせ、皮膚表面の質感やハリを整えます。
施術後は、一時的に以下の症状が現れることがあります。
皮下組織を移動させるため、施術直後は皮膚にギャザーやくぼみが生じることがあります。
多くは腫れが落ち着き、糸が組織へなじむにつれて、徐々に目立ちにくくなります。
まれに、感染、糸の露出、糸の移動、糸の断裂、持続する凹凸、肉芽腫、炎症、知覚異常、神経損傷、左右差などが生じる可能性があります。
吸収性糸リフトの報告では、腫脹、内出血、痛み、皮膚のくぼみ、糸の触知・露出、感染などが代表的な合併症として挙げられています。
施術後は一定期間、以下の行動を控えてください。
具体的な制限期間は、使用する糸や施術範囲に応じてご案内します。
以下に該当する場合は、治療を行えない、または施術時期を変更することがあります。
過去に糸リフトを受けたことがある場合は、使用した糸の種類、本数、挿入部位、施術時期を、可能な範囲でお伝えください。
糸リフトでは、強く引き上げることだけが正解ではありません。
組織を過度に引っ張ると、顔の横幅が不自然に広がる、頬が平坦に見える、こめかみに組織が集まる、皮膚の引きつれが強くなるなど、不自然な仕上がりにつながることがあります。
当院では、糸ごとの役割を明確に分けて使用します。
必要に応じて複数の糸を組み合わせますが、糸を多く挿入すること自体を目的にはしません。
脂肪の量、皮膚の厚み、骨格、左右差、表情の動きを確認し、下がった組織を、その方の顔立ちに合った自然な位置へ整えることを大切にしています。
顔を別人のように変えるのではなく、たるみによって崩れた輪郭を、その方に合ったバランスへ戻すことを目指します。


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